特集 東急9000系

1.はじめに

 東急9000系は1986年に登場以来1991年まで増備された。もともと東横線用という目的だけではなく、都心線(現在の目黒線)用と旧型車輌の3000形や旧5000系の置き換えやその後の東急の標準形式を目指して製造された。そのため、行先方向幕には「目黒」などが印刷されている。編成は全部で15編成存在し、そのうち9007Fのみは大井町線所属のため5輌編成の3M2T、他の14編成は4M4Tで東横線での運用についている。当時、非常に注目されていたパワーエレクトロニクスのVVVFインバータ制御方式を導入し、大容量主電動機(170kw)を搭載、車内にはLED行先表示器や車端部クロスシート、その後の1000系・2000系・7700系(7715F)に採用される5:3:2の前面窓配置等、周囲の私鉄から比べると最新鋭の車輌であった。そのデザインは機能美の集結と言うことができ、登場から15年以上経った現在においてもその姿は見劣りしないという姿が語っているようにも思える。M車には中間車としての装備が出来るだけ搭載され、重量増加による粘着性能の向上と短編成組成可能としている。実際にTc1-MTc2という編成でこどもの国線で走行している。
鉄道模型の世界でも9000系のキットが登場し、7000系のキットに封入されている前面を使って作成していたころが懐かしいと感じている。一見同じように見える9000系も細かい点では差異があり、興味深いところである。
 東横線は長年の終着駅であった桜木町を廃止とし横浜を地下化した駅から新たにみなとみらい線へ乗り入れることとなり大きな変化が訪れた。それとほぼ同時に製造経過18年を過ぎた9000系は室内更新工事を施工され行先幕も交換された。また、田園都市線の8500系同様、踏切障害物対策に形状こそ違うものの、大型排障器(スカート)を装着している。

2.形式について

 2.1.編成形態 

基本編成形態は以下の通りである。

<起点方    終点方>

東横線仕様

Tc2
9000
M
9200
T2
9700
M
9300
T1
9800
M
9400
M0
9600
Tc2
9100

大井町線仕様

Tc2
9000
M
9200
M
9400
M0
9600
Tc1
9100

 

▲9007山側 ▲9007海側

 

▲9207山側 ▲9207海側
▲9407山側 ▲9407海側
▲9607山側 ▲9607海側
▲9107山側 ▲9107海側

 

 2.2.製造仕様形態
  9000系には大きく分けて3タイプの製造形態があり、製造を重ねていく上で改良を重ねている。ここでは便宜的に以下の通り表記する。

 初期車:9001F
 前期車:9002F〜9007F
 後期車:9008F〜9015F

3.主回路

 3.1.集電装置
   8500系の後期車である8637F〜搭載を開始したPT44S-D-Mを搭載している。地下トンネルの降下防止のため小型のパンタグラフとし1M制御であるM車には全車搭載し、一輌で中間車のすべての機能を持たせ、

 3.2.主制御装置
   東急の新造車では初のVVVFインバータ制御方式を採用しており、それまで6M2TというMT比であった東横線の編成を4M4Tとすることを可能にした。M車にはすべて搭載され1C4M方式を採用している。

▲日立製 

4.制御回路

 4.1.運転台
  8000系から踏襲するT字ワンハンドルマスコンを装備し、貫通扉をオフセットしたおかげで、非常に広いコンソールとなっている。
  制御方式が変更されても力行4N・制動7段・非常は変わっていない。

▲運転台コンソール

5.補助回路

  4.1.交流電源装置(SIV)
    MGからSIVに変更され静粛性を向上している。M車には搭載するが、M0車(9600)のみ搭載しない。

▲SIV

5.車体

 5.1.概要
  東横線の基本である20m級4扉を踏襲しステンレスビート構造である。側面窓はすべて一段降下窓である。戸袋窓はないが妻窓はあり、明るい車内を構成している。

 5.2.差異
  次車による差が大きいのが初期車・前期車と後期車の側面腰部に巻かれている帯である。前者は強度の都合から太いビードとしその上に赤いシールを貼り付けている。

▲前期車 ▲後期車

 5.3.室内
  8090系から続く明るいデコラを使用した壁面であったが、登場から18年経過したこの形式にも室内更新工事が施されるようになった。それ以前には交通バリアフリー法に基づき、車椅子スペースの設置などを精力的に進め、現在ではすべて終了している。
  車端部はクロスシートとし場所によっては優先座席をかねている。東急の車両のなかでも飛びぬけてやわらかい座席を装備し、7人がけのドア間座席には3・4の間に肘置きタイプの間仕切りを設けて着席定員をアピールしている。天井は既存の形式同様に高く空調吹き出し口については三菱製のラインフローを採用している。

  5.3.1室内更新
.  現在施工中の室内更新はまだ途中の段階のため、段階的な編成も存在する。ドアチャイム装備と側引戸かもい部へのLED情報表示器の搭載編成がそれで、既存の状態のまま装置を取り付けている。
  もう一つは完全に更新するタイプで妻部・座席端部の木目調デコラへの貼り換えと座席間仕切り撤去、スタンションポールの設置、LED情報表示器・ドアチャイムの設置が主たるところである。更新作業は長津田工場へ定期全般検査入場時に施工されおおよそ2ヶ月で出場する。

 
▲座席モケット ▲つり革  
▲車端クロスシート ▲車内 ▲室内更新(チャイム・LED表示器未取付)
▲LED表示機のみ取付 ▲室内更新併施 ▲情報受信アンテナ
▲更新車 ▲未更新車

  5.4.前面
   「はじめに」にも記載したが5:3:2の窓配置はこの形式から派生し、1000系・2000系・7715F・7000系の他社への先頭化改造車にも採用されている。貫通する必要のない車両なので運転室を広く取り地下トンネル用の貫通扉をオフセットするというのはこの時代からの流行だと感じる。
  前照灯は8090系からの角型シールドビームとし尾灯もLEDの植え込みとなった。機能美あふれる前面である。ライトケースにはいくつかタイプがあるようで、光沢のあるなしが存在するようだ。

▲9004 ▲9014
▲9112 ▲9115
▲LEDによる尾灯

  5.4.2.補助排障器
    2005年1月より検査出場の9012Fから補助排障器が装備されることになった。この改造は今のところ長津田工場入場時に施工されているが、8500系のように検車区で行うかどうかは不明。また、形状については8500系・5000系とは異なった形となっている。

▲補助排障器

  5.5.側面
    車体側面には4枚扉とユニットサッシ、かもい部に二本、腰部に3本のビードが走り前述のように太い上帯については差異がある。下帯については特に差は見られない。また、車体中央に種別・行先表示器が一台取り付けられている。さらに。目黒線を意識してか、スピーカー設置の準備済み。1000系・2000系は設置済み。次車によって蓋の仕方が異なり後期の方がスマートに処理されている。

▲スピーカー蓋(初期車・前期車) ▲スピーカー蓋(後期車)

  5.6.車体間
    車体間はM車妻部起点方に電装配管がならび屋根上へ登るステップが装備されているのは既存車と同様でゴム製の車端ホロが装備されている。

▲車体間(参考:ホロ設置前)
▲車端部ホロ

6.制御回路

 6.1.空制弁類
  「ブレーキ制御装置」により電空切換などが行われる装置。速度と圧力の調整も行う。正確な回生電力やブレーキパターンを把握しフィードバックすることが可能で省エネ運転が可能である。

▲集中コック類

  6.2.救援ブレーキ
    先頭部には他形式とも連結可能な救援ブレーキが搭載されている。登場当初ATSしか搭載しなかった東横線の車両は先にATC化された田園都市線を走れないためデヤデハ編成に挟まれて長津田へ入場していた。その際にもこのホース類を使用している。

▲救援ブレーキ

7.走り装置

 7.1.電動車用台車(TS1004)
   それまで作り続けてきた東急車輛の傑作であるTS-800シリーズからペデスタル式の軸箱支持方式を受け継ぎ、軽量ボルスタレスの台車となった。電動機は170kw/hのTKM-86を搭載している。

▲TS1004

 7.2.付随車用台車(TS1005)
    電動車同様にボルスタレス台車にディスクブレーキを装備した。

▲TS1005

8.保安装置

 8.1.概要
  9000系に搭載される保安装置は大きく分けて二つある。一つは東横線・田園都市線・こどもの国線・みなとみらい線で使用されているCS-ATC。もう一つは大井町線で使用されている東急ATS。工場入場や外板清掃などで目黒線を経由する際にはATOが使用できないため回送扱いとしている。

▲ATC装置 ▲受電器(写真は8000系)

 8.2.扉非扱検知
  大井町線には戸越公園・九品仏駅がホームの延長の関係から一部の扉が開かない。それを自動的に働かせるための車上装置。大井町線所属の9007F(9007)のみ搭載している。

▲車上子

 8.3.列番選別器
  転轍機により列車のルートを開通させるためその当該列車番号を送信するための車上子。終点方先頭車に搭載。

▲列番選別器

 

9.床下機器(参考資料)


ブレーキ制御機器


除湿装置と元ダメ(タンク)左から1・2


整流装置


ブレーキ制御・フィルタリアクトル・ブレーキ制御装置


整流装置・ブレーキ制御機器・除湿装置・元ダメ

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